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鉄鋼非鉄業界をサステナブルに製鉄現場のCO2排出削減と自動化に取り組む鉄鋼非鉄プラント本部の挑戦

鉄鋼非鉄業は、日本の基幹産業として、長くものづくりを支えてきた。鉄鋼の重要性はこれからも変わらないとはいえ、産業構造が大きく変化する中で鉄鋼非鉄業が持続的に成長を続けるためには課題もある。一つがCO2排出削減であり、もう一つが製造現場を支える人材の確保だ。鉄鋼業からのCO2排出量は、国内産業界の約40%(国内全体の約14%)と大きな割合を占めており、社会的にもその削減が求められている。また、鉄鋼非鉄業の製造現場は熟練の技術者に支えられているが、少子高齢化が進むなか自動化が限定的であり、人材の確保は喫緊の課題である。これらの課題に当社はどう応えていくのか。その取り組みを実務責任者の視点からお届けする。

鉄鋼非鉄プラント本部 グローバルプラント部
鉄鋼非鉄新規事業開発チーム チーム長
家田 達矢

2005年住友商事マシネックス中部(当時)に入社。以来鉄鋼非鉄業界向けの設備トレードに携わってきた。2022年から、鉄鋼業のCO2削減を目指したバイオコークスのプロジェクトに参画。2024年には脱炭素や自動化など新たな事業に取り組む新規事業開発チームが発足し、そのチーム長を務める。バイオコークスの社会実装および鉄鋼非鉄業界での自動化技術プロジェクトにおいて中心的な役割を担っている。

求められるCO2排出量削減と製造工程の自動化

製鉄プロセスには鉄鉱石と石炭を原料とする高炉法と、鉄スクラップなどを再利用する電炉法があります。電炉法は鉄スクラップを再利用するため発生するCO2排出量は、高炉と比較して4分の1に留まると言われており、そのため高炉メーカーは電炉法にも注目しています。一方で電炉メーカーも使用するカーボン等の削減により更なるCO2排出削減に取り組む必要があります。

もう一つの大きな課題が人材の確保です。鉄鋼非鉄業は歴史ある業界であり、その現場は脈々と受け継がれる熟練技術に支えられてきました。しかし少子高齢化が進むなか、技術伝承が上手く進まなければ製造に支障をきたす恐れもあります。今後さらに加速が予想される製造現場の働き手不足を補うためには、製造工程における高度な自動化が欠かせません。

日本の基幹産業である鉄鋼非鉄業がより魅力的な業界となり、持続的に成長するためには、より一層のCO2排出削減と自動化が求められます。

国内CO2総排出量(2019年度実績)

出典)国立研究開発法人 国立環境研究所
日本の温室効果ガス排出データ(1990~2022年度)確報値を基に当社作成

鉄鋼業界でのカーボンニュートラル実現に向け、バイオコークスの社会実装を目指す

電炉法は高炉法と比較してすでにCO2排出量の削減がなされているプロセスであるが故に、更なるCO2排出削減が困難な状況ですが、当社はあきらめずに解決策を探してきました。電炉法は炉内で電気アークを発生させ、そのアーク熱によって原料である鉄スクラップを溶解、さらに不純物を除去し、クリーンな鋼を製造します。その際に補助燃料や不純物除去などの目的で石炭コークスを利用していますが、この石炭コークスの代替品として近畿大学が研究していたバイオコークス(BIC)※が活用できるのではないかと考え、2021年から産学連携して社会実装に向けた検討をおこなっています。

既に需要家である電炉メーカーとともに、世界初となる電炉実機での検証テストを実施し、好結果が得られています。ただし電炉と言っても方式、仕様、操業方法が各社で異なるため、電炉毎にBICの仕様や性状を最適化することが求められます。そこで現在、自社で製造設備を持ってサンプルを作りつつ、各種ノウハウを蓄積し、BICの規格化にも取り組んでいます。

※ 近畿大学が開発した光合成に起因するほぼ全ての植物から形成できる固形燃料の総称であり、従来のバイオマス燃料と異なり、圧縮強度が高く、高温環境下での長時間緩慢燃焼が可能。

バイオコークス
  • 冷間圧縮強度が高く、輸送/保管時の破損/崩落が少ない
  • 保管時の自然発火の可能性が極めて低い
  • 高温環境下での長時間緩慢燃焼が可能
  • 原料と比べ見かけ比重が大きい(1.2~1.4)

熟練技術が必要で危険が伴う業務の自動化に取り組む

鉄鋼非鉄の製造現場は、高温で粉塵が多い過酷な環境下であるため自動化のニーズは高く、当社も解決策を探してきました。そのなかで出会ったのが、イタリアのPolytec社です。同社は鉄鋼非鉄業界向けのシステム導入が約8割と、鉄鋼非鉄業界の製造工程や製造設備、作業現場の状況やそれらに関連する課題を熟知したシステムインテグレーターです。

ただし各社の製造工程は似通っているものの、現場環境や操業ノウハウは各社各様です。また欧州に比べて日本の工場は狭いという課題もあり、自動化に対するハードルはより高い状況です。そのため需要家、Polytec社、当社が一丸となって課題解決に向けた要件定義を明確にし、日本と欧州の操業方法、規格の違いを明確にした上で進めています。

現在、電炉出鋼口の開口作業、レードル出鋼口(スライディングゲート)のメンテナンス作業、溶鋼の成分を計測するためのサンプル採取など、過酷、且つ高頻度で行うものの従来は自動化が困難と言われていた作業の自動化を主に取り組んでいます。

サステナブルな鉄鋼非鉄業界の実現をサポートしたい

バイオコークスの社会実装には技術面やコスト面等のまだまだ解決すべき課題があります。この課題を解決するため、CO2排出量削減といった付加価値の定量化や、製造場所、原料調達先、原料調達方法等を定めた最適なエコシステムを確立することで、社会実装を目指します。

自動化は、多くの需要家に興味を持っていただいています。すでに欧米では多くの実績があるソリューションなので、これらが日本でも多く導入されることを目指しています。

これらの新たな取り組みを通じ、鉄鋼非鉄業界のサステナブルに向けた変革に少しでも寄与できれば、と考えています。また、自社で製造設備を所有しBICの製造に取り組むといった、従来の当社メイン事業であるトレードの枠にはまらない取り組みを開始しています。この取り組みを通じ、従来の枠に囚われず各業界におけるサステナブルな取り組みを新たに創造していきたい。

次なる挑戦

第2回・COMING SOON